スガシカオ 夕立ち&グットバイ

スガシカオさんが新しいアルバムを出されるそうですね。それにちなんで、今回は私の好きなスガシカオさんの曲をご紹介したいと思います。

2曲ご紹介するつもりなのですが、どちらもアルバム『Sweet』からの2曲となっております。このアルバムはその他にも名曲ぞろいなのでおすすめです。僕は大学時代によく聞いていた記憶があります。また、夕立ちはアコギでよく弾き語りしていました。

本人がどこかでおっしゃっていたように、こちらはツアーの合間に忙しい合間を縫って作成されたアルバムだそうです。当時、大江健三郎にハマっていて『芽むしり子撃ち』なんかを読んでいたと仰っていて、その影響か歌詞の内容が物語性の強いものになっていると感じます。スガシカオさんの歌詞はいつも風景や日常の場面を切り取るようなものが多いのですが、曲の主人公の『瞬間』が切り取られ、現在に至るまでの心境や人間関係など『瞬間』の前後に何があったのだろうと思わせてくれるような曲が多いです。まさにこのアルバムでは上手な短編小説家のように、ある瞬間を切り取っています。

『夕立ち』はギターのワウが印象的なミディアムテンポの曲です。メロディももちろん素晴らしいのですが、僕はこの曲の歌詞が好きです。おそらく主人公は女性とどこかに出かけた帰りに、渋滞の高速で『ふいに君が口ずさむ。僕は聞いてる。聞き覚えのないメロディー』と示されるようにどこかすれ違いの気配を感じています。まずその風景の切り取り方が好きです。そしてラジオから『知らない人の悲しいニュース』と『つまらないバラード』を聞いて、そのすれ違いはこの後、決定的なものになってしまい、取り返しのつかないような感覚を抱いています。曲の最後の方で『失ってしまうもの』と『守り切れる』ものはほんのわずかな違いと述べるように、おそらくは二人の関係はうまくいかなかったことが暗示され、サビの『 ふいに君が口ずさむ。僕は聞いてる。聞き覚えのないメロディー 』が連呼されます。そして、聞き手はいろいろなことを考えされられたままラストを迎えます。渋滞の高速という場面が取り返しのつかないような重要な場面のように感じられ、日常のふとした瞬間が実は決定的で怖いものなのかもしれないと思いがふっと湧いてきて不思議な感じがして好きです。

『グット・バイ』も例にもれず歌詞が好きです。スガシカオさんの曲の中で一番好きといっていいかもしれません。まず始まりが秀逸です。キーボードのリフのあとに『君には黙っていた。気分の悪い話さ。ひがんだ奴らの手垢のついた噂で、新しい旅たちを汚したりはしたくないし。』これもおそらくは男女の人間関係を描いていると想像するのですが、僕の見立てでは新しい場所で新たな挑戦をする女性を男性が空港に送っていく場面から始まっています。男性は共通のコミュニティーの中で女性の挑戦があまり歓迎されていないことを知りつつも何も言わず、黙っています。『ゲートの向こう側で一度こっちを振り向いた。少しだけ笑って何か言ったみたい』とその男性の思いを知りながら、彼女も男性に『笑って何かをいう』というアクションをとります。旅立ちの瞬間の二人の心情が描かれていて、ストーリーを想像するたび言葉にできないような寂しさと切なさがこみあげてきて好きです。僕は思うのですが、旅立ちとか変化の場面っていいことばかりじゃないのですよね。当然リスクもあるし、周りだってよく思わない人も出てきて当然です。この曲は『旅立ち』というテーマで人生のある瞬間の期待や不安や寂しさがうまく描かれているように感じます。

以上、スガシカオさんの2曲を紹介いたしました。スガシカオさんは他にも名曲ぞろいですので、機会があれば違う曲もご紹介させていただきます。新しいアルバムも非常に楽しみです。

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