『デバッカー』金原ひとみ

こんにちは、シンです。今日は金原ひとみさんの「デバッカー」という小説を紹介します。この前(だいぶ前…仕事忙しい…)紹介した「アタラクシア」という小説といい、この小説といい、個人的には今一番新作が楽しみな日本人女性作家です。

この小説は2019年8月号の新潮という文芸誌に掲載されています。この小説を一言で表すと、以下のような感じです。

美容整形というテーマで自我の葛藤を描いた作品

美容整形というテーマで「自我」を描いた作品は、特段目新しいテーマではありません。しかしながら、彼女のドライブのある筆致と正確な心理描写で描かれると確かな説得力をもって、ページをめくる手が止まりません。

この小説は書き出しが素晴らしいです。最初の1ページがかなり魅力的なので「性」というテーマが苦手ではない人にはかなりおすすめです。

劣等意識から美容整形にハマっていってしまうという趣旨なのですが、パッと入ってくる心理描写が面白いです。

今、彼の目には自分はどんな風に見えているんだろう。彼の目の位置に手鏡があればいいのにと思いながら(略)

「顔」というある意味では社会に晒し続ける「記号」に優劣をつけ、我々は生きている訳ですが、私は劣っているのではないかという不安が自我というフィルターを通して増幅していってしまう様が上手に描かれています。

彼と向き合うために美容整形に走り、走れば走るほど私は直面し続けた。自信のない自分、恐れをなす自分と。

ラストの結末も僕は好きです。女性はパッと切り替えてしまう強さがあってリアルに描けてるなぁーと思いました。

早く新作出してほしい。女性誌に連載している小説も読みたいけど、本屋さんで買うのは恥ずかしいです……とにかく今一番好きな作家さんです。ではでは。

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